くるみDiary

昭和の少女漫画や日々感じた事を書いています!

高杉菜穂子「指輪物語」を読んだ感想

「指輪物語」の全5巻読み終わりました。

作品名や漫画家の名前も分からない状態で長い間探していた漫画だったので、電子書籍で読めるなんて信じられなかったしとても嬉しかったです、もう30年以上経っていますからね。

hanae7.hatenablog.com

「なかよし」に連載されていた1987年~1989年当時、私は克也の方が好きだったんです、俊に魅力を感じられなくて奏美はどうしてそんなに俊にこだわるのだろうと思っていました。

克也の方が優しいし包容力もあるので奏美にはお似合いだと思っていたのですが、30年以上経って再び読んでみると俊ってとても気の毒な状態だったんだなと思いました。

6歳の時、奏美の父親から頼まれ離れるようにわざと嫌われるような事をしなければいけなかったし、中学生になってからは克也から奏美を賭けるという結果は最初から分かっていた負け試合をけしかけられて、それが原因でスプリンターとして期待されていたのに陸上をやめる事になってしまったし、かなり苦悩していたんだろうなと思いました。

少女漫画って明るく活発で何があってもくじけない前向きなヒロインが多かったのですが「指輪物語」のヒロインの奏美は内向的で運動音痴、団体行動が苦手で中学生の時ブラスバンド部も半年でやめてしまい、それがトラウマになっているという今までいなかったタイプだなと思って勝手に親近感をもっていました。

でも奏美のようなタイプは多くの少女漫画ファンからは共感を得られないかもしれないとも思いました、何かあるとすぐ泣くしネガティブ、自分の恋愛ばかりに気を取られて、結局は周りにいる人を傷つけるという結果に。

克也の気持ちも全く気付かずに親友の双葉とくっつけさせようとする所などかなり鈍感、克也と双葉は傷ついただろうなと思います。

そうは言ってもネガティブ思考は自分と似ている所でもあるので、私は奏美が好きなんですけどね。

意外だったのが私は30年以上前のこの作品を読んでも、古さを感じなかったという事です

ただ細かい部分を見ると時代を感じさせる所もあります

★テレビの録画はビデオデッキ

★何飲む❓と聞かれて「つぶつぶオレンジ」と答えたり

★昨日のとんねるず見た~❓ノリダーおっかしかったよね

★夜9時になると「ザ・ベストテン」が始まる

★学校でトランプをしている(今の高校生はしない❓)

★アベック

という言葉も出てきたりするので。

俊にとっては6歳の時の奏美との別れは仕方がなかったとしてもその後の克也との賭け試合に負けて心に傷を負ってしまったんですよね、これはダメージが大きかった。

克也の一方的な思い込みと嫉妬心からこうなってしまったのですが、奏美の俊に対する思いの強さを知り克也は身を引くのですがその時の

「さよなら 僕だけの奏美」

はとても悲しかったです。

子供の頃から奏美だけを見て思い続けてきた克也はこれから大丈夫なんだろうかと思ってしまいました。

俊の事を中学生の頃から好きだった久美は髪をバッサリカットして前向きに(当時は失恋すると髪を切るという女性が多かったイメージがあります)

双葉もフラれたけど「克也先輩に告白できて良かった」と明るく言っていましたが、正直、鈍感な奏美に振り回されて気の毒なように思いました。私は双葉がとても好きなので克也とお付き合いしてほしいなと思いました。

俊とは同じ中学で陸上部のマネージャーをしていた絵里奈ですが、俊を陸上部に入部させようと必死で俊の事も好きだったみたいですが、久美が転校してきてからはフェードアウトしていき最初の頃だけで登場しなくなりましたね

絵里奈は積極的な性格ですが久美はそれにも増して行動的なのでややこしくなるからそうしたのかなとも思いました。

それから唯一残念に思ったのが途中で画風が変わってしまった事です、1巻と5巻を見比べてみると結構違うなと思いました。

特に俊は1巻ではシャープな感じで描かれていたのですが、5巻になると鋭い感じがなくなってしまって私は1巻の画風の方が好きです。

「指輪物語」を再び読んで気持ちに変化があったのは克也より俊の方に惹かれるようになっていったという事です、俊が負った心の傷を連載当時、私は理解できていなかったんだなと思いました。

それからこの作品の舞台が北海道だと知って驚きました、奏美達が住んでいた所ってどこだったのか全く覚えていませんでした。

この作品が連載されていたのはバブルの時期ですが、肩パットを強調した洋服とか日本が好景気に沸いていたというような部分は描かれていないので、古く感じなかったと思ったのはそういった事もあるのかもしれません。

「指輪物語」ってずっと昭和の漫画だと思っていたのですが、途中から平成に変わっているんですね、昭和の終わりから平成に移り変わっていくそういう時代の作品でもありました。

「指輪物語」を読んでいくうちにまだ若かった頃の自分を思い出しました、当時の私の環境や精神状態は良いものではなかったのですが、もしかしたらこの漫画に助けられていたのかもしれません。

今年もあと残り1か月となってしまいましたが、この作品と再会できたのが今年一番嬉しかった事になるだろうなと思います。