くるみDiary

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国語の教科書に掲載された「赤い実はじけた」名木田恵子

「赤い実はじけた」は名木田恵子さんが書いた物語で、1992年~2000年まで光村図書の小学6年生の国語の教科書に掲載されていたそうです。

名木田恵子さんと言えば水木杏子名義で私の好きな「キャンディ・キャンディ」「サンデイズチャイルド」の原作者でもあるので、この「赤い実はじけた」には興味をもっていました。

この本は「赤い実はじけた」の他に6つの物語、合計7つの短編小説がおさめられています。

「赤い実はじけた」🍎

ヒロインの綾子は怖そうなイメージがあり今まで苦手だった岡本哲夫の親が経営している魚屋さんに買い物に行った時、哲夫がお店の手伝いをしたいた姿を見て学校で見るイメージと違っていて、その瞬間パチンと赤い実がはじけたといいうもの。それは突然人を好きになるという意味だった。

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「ジョージ」🍏

ジョージと言ってもハーフの男の子ではない。現在5年生で同い年の朝美はジョージは自分よりも背が低く太っていて幼稚園の頃は泣き虫だったジョージをどこか見下したような気持ちで見ていたが、バレンタインデーに泉川絵麻からチョコレートを貰いホワイトデーにお返しをしたいという話しをジョージから聞いて複雑な心境になる。ジョージはいつの間には朝美より背が高くなっていた。

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「秘密の日記」🍎

琴井はルミちゃんと交換日記をしているが、誰にも言えない秘密の日記を書いていた、それは川口浩幸にキスされたという事、2人は誰にも言わず隠れて会っていたが川口君は電話でもうコソコソ会うのはやめて堂々と会おうと言われ、琴井は嬉しくて涙する。

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「まぼろしの恋人」🍏

この主人公は③「秘密の日記」にも登場する代表委員の萩尾君、学校では真面目で明るいイメージで見られているが実は普段からいたずら電話をしていた、適当に番号をプッシュして出たら相手をバカ呼ばわりして切ってしまう、その中で何度か電話で会話をするようになった22歳のタレント志望の女性、しかしその女性は実は・・・

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「な・ぐ・ら・な・い」🍎

6年生の英貴は1年生の弟、貴行と病院にいた、父親に暴力を振るわれケガをした母親に付き添っていたのだった、父親はすぐにキレて母親に暴力を振るうのだが子供達には手を出したことがなかった、しかし今回は初めて英貴を殴った。子供には絶対でを出さなかった父親が殴ってしまったのだった。

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「さよなら藤木くん」🍏

舞子のところに友達から毎晩のようにかかってくる電話、話しの内容は決まって好きな男の子の話しばかり、「舞子にも好きな人がいないの❓」と聞かれるがいない。6年生になって好きな人がいないのはそんなにおかしい事なのか・・・そう思った舞子は実は好きな人がいる名前は藤木治、おばあちゃんのいる甲府だから遠くに住んでいると嘘をついてしまった。その架空の人物、藤木くんとは最後の最後まで嘘をつき通しお別れをする事になった。

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「好きなものは・・・・・・」🍎

明里は火曜日が一番嫌い、翌日に大嫌いなピアノのレッスンがあるから。ピアノを習っているのは母親の強い希望でもあった、明里は母親と口論になるが母親もその母(明里にとって祖母)から押しつけられてピアノを習っていた過去があった。母親から「そんなに嫌ならピアノをやめてもいい」と言われしばらくピアノから距離をおくことになった明里だったが。

私がこの物語で面白いなと思ったのが「ジョージ」「まぼろしの恋人」かな。

幼い頃から自分より劣っていると思っていたジョージを好きだという女の子が現れて、それまで気づかなかった朝美のジョージへの気持ちがよく表現されていて、こういった事って割とあるかもしれないなって思いました。

「まぼろしの恋人」は本当にまぼろしだったわけで、萩尾君もまさか相手の女性が嘘をついているとは思いもしなかったので、まあこれはどっちもどっちだったという感じでした。

「な・ぐ・ら・な・い」はかなり深刻なお話しなので、でもラストで英貴は病院の近くにいた父親らしき人を見たけど、その後この家族はどうなってしまうんだろうと思いました。

「赤い実はじけた」はこれはもう少し年齢が下でも良かったかなと思いました、小学4年生~5年生くらいの方がしっくりきたかもしれません、でも教科書掲載となると恋愛ものは6年生くらいにならないと書けないのかなとも思いました。恋愛といってもそんなあからさまな表現はないですし、爽やかな感じの内容になっています。

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1990年代の小学生の物語に世代の違う私がすんなり入っていけたのは、多分まだ交換日記とかアナログな部分が残っているからなのかもしれません、「まぼろしの恋人」ケイタイという言葉が出てきますが、萩尾君は携帯電話を持っておらず公衆電話からかけています。

「赤い実はじけた」以外はいつ頃書いたものなのかなと思いましたが、この本は1999年に発売されたもので、多分この本の出版ために書いたものだとすれば90年代後半かなと思います。インターネットが普及し始めてはいましたが、まだアナログな部分も残っていた頃で時代的にも興味深いなと思いました。

それから三村久美子さんの挿絵もあまり華美な感じではなく、それぞれの登場人物に合った感じに描かれていてピッタリだと思いました。

当時、教科書で読んでいた世代は懐かしいと思うでしょうし、世代でなくても共感できる部分が沢山あるので、名木田先生の書く物語はやっぱりいいなと思いました。