くるみDiary

昭和の少女漫画や日々感じた事を書いています!

アングラ全盛期「15歳 天井桟敷物語」高橋咲

アングラには興味がない私ですが、昔、萩原朔美が書いた「思い出の中の寺山修司」を読んだ事があるので、歌人で劇作家の寺山修司が主宰していた劇団天井桟敷の劇団員だった「15歳 天井桟敷物語」に興味をもちました。

この本を初めて読んだのはもう10年以上前になります。

本のタイトル通り15歳の高橋咲という少女がアングラ全盛期だった1971年、劇団天井桟敷のオーディションを受けて合格するところから始まります。

その劇団の中心人物の一人だったJ・A・シーザー(日本人です)を好きになり海外公演中妊娠が発覚しますが、「俺じゃあないよね」なんてひどい事を言われてしまいます。このシーザーという男性、相当モテるらしくて次から次へと女性がいる状態だったようで、でもアングラ劇団というものは、天井桟敷に限らずこんな感じだったのかなと思いました。

結局、劇団の仲間から教えてもらった天井桟敷の近くにある石島産婦人科で中絶する事になります、でもそれは悲観的ではなく早くおろしてスッキリしたかったという気持ちが強かったようです。

俳優の仕事だけでは生活してはいけないのでアルバイトもする事になります、その中にヌードモデルというのがあってギャラも高いという事もあって始めますが、だんだんと嫌になってきてやめてしまいます。

でもお金が必要なので新宿三丁目にあったオープンしたばかりのお店「倫敦」(ロンドン)で夜の6時から11時まで働く事になります。

そのお店にある男性が客として来ます、ここで「招かれざる客」というタイトルが書いてあるのですが、その人物が後に作家となる安部譲二でした。

安部さんは彼女を気に入ってしまい、しょっちゅう送り迎えしたりするようになるのですが、いろいろ理由をつけては2人きりになる機会を作って、挙句の果ては安部さんに迫られ強引に関係をもつ事になってしまいます、まあ犯されたと言っていいと思います。

その後、安部さんとの関係を知ったお店の人から「この辺を取り仕切るやくざだ」という事を聞かされ金槌で頭を殴られたくらいのショックを受けます。

最初は嫌がっていた高橋咲でしたが2人は付き合う事になります。安部さんは結婚しているので不倫関係です、この時の高橋咲の本音が書かれています。

「あんな中年のデブとつき合っているなんて誰かに知られたら、いっそ死んでしまいたい、ましてヤクザだ」

「もうシーザーどころではない、また、あの中年の巨体に抱かれるのかと思うとやり切れなさで胸が詰まる」

安部さんはアムステルダム公演にも訪れ、彼女の行く所には気になって海外でも訪問していたようです、高橋咲曰く安部さんはよく喋り大声で笑う、流暢なクイーンズイングリッシュを話すのでこの人は本当にヤクザなんだろうかと不思議に思っていたみたいです。

本にはハッキリとは書いていないのですが、寺山修司と田中未知は恋愛関係だったように思わせる記述があります。この2人は「時には母のない子のように」の作詞作曲者でもありますね。

カルメン・マキの事もほんの少しだけですが書かれてあります。

高橋咲は3年で劇団をやめる事になるのですが、この本には新高恵子、蘭妖子などが登場し当時、天井桟敷の舞台を見ていた人は懐かしく思うのではないでしょうか。

知らない世代でも1970年代初頭のアングラの世界、雰囲気が高橋咲という少女の目を通して知る事ができるのではと思います。